両親が認知症になる前にやるべきことを解説します

家族信託の基本的な構成要素は、「委託者」「受託者」「受益者」の3者です。

●「委託者」は、もともと財産を所有し、それを信託に出す人です。

●「受託者」は、委託者から託された財産を管理・運用・処分する役割を担う人です。

●「受益者」は、信託された財産の利益を受け取る権利を持つ人です。

家族信託の仕組みでは、委託者が自身の財産の管理を受託者に任せ、受託者がその財産を適切に運用し、そこから生じる利益を受益者が享受します。

家族信託では、親が自身の財産を子に託し、子が管理するケースが多く、財産の所有者である親自身がその利益を受け取る形が一般的です。

●柔軟な財産管理：成年後見制度と異なり、家族信託では信託契約に基づき、受託者が柔軟に財産を管理・運用できます。これにより、個々の家族の状況やニーズに合わせた対応が可能となります。

●財産凍結の回避：親が認知症を発症すると、財産が凍結され、不動産や有価証券の売却や運用が困難になる場合があります。家族信託を活用することで、受託者が財産を適切に管理し、必要な手続きを継続できます。

●相続対策：信託契約により、財産の承継先や時期を詳細に指定できるため、相続トラブルの防止や円滑な資産承継が期待できます。

1. 実家の管理・売却：親が施設に入所し、実家が空き家になる場合に家族信託を利用して受託者が実家を賃貸・売却し、売却代金や賃料を親の生活費や医療費に充てることができます。


2. 賃貸不動産の運用：親が賃貸物件を所有している場合、信託により受託者が物件の管理や契約更新を行い、安定した収入源を確保できます。

3. 障害のある子の生活保障：親が自身の財産を信託し、受託者に管理を任せることで、将来的に障がいのある子の生活費や医療費を安定的に供給できます。

4. 事業承継：自社株式を信託し、後継者である家族に受託者として管理させることで、スムーズな事業承継と経営の安定化を図ることができます。
家族信託研究所

家族信託は、家族の状況や目的に応じて柔軟に設計できるため、専門家と相談しながら最適な信託契約を構築することが重要です。

任意後見制度は、将来的に判断能力が低下することに備えて、信頼できる親族やその他の人を任意後見契約を締結しておきます。

任意後見契約は公正証書として作成したら、公証人が法務局で任意後見登記の申請手続きを行います。

任意後見登記の効力は、第3者に任意後見契約の存在を証明できるためです。

●事前の準備：判断能力が十分にあるうちに、将来の支援者を自分で選び、具体的な支援内容を決めておくことができます。

●柔軟な対応：法定後見制度と比べて、個々の事情や希望に合わせた柔軟な契約内容を設定できます。

●信頼関係の確保：家族や親しい人を任意後見人に指定することで、安心してサポートを受けられます。

1. 契約の締結：本人と任意後見人となる人が、公証人の立会いのもと、公正証書で契約を結びます。

2. 契約の登記：契約内容は法務局に登記され、正式に記録されます。

3. 任意後見監督人の選任：本人の判断能力が低下した際、家庭裁判所に申し立てを行い、任意後見監督人が選ばれます。

4. 契約の発効：任意後見監督人の選任後、契約が正式に効力を持ち、任意後見人が支援を開始します。

●財産管理：不動産や預貯金の管理、年金の受取、税金や公共料金の支払いなど。

●生活・療養看護の手配：介護サービスの契約、医療機関との連絡、入院手続き、生活費の送金など。

なお、任意後見人はこれらの業務を代理権に基づいて行いますが、直接的な介護や家事などの身体的なサポートは含まれません。

任意後見契約は、将来の不安に備えて、自身の意思を尊重しながら信頼できる人にサポートを依頼する有効な手段です。

早めの準備と適切な契約内容の設定が、安心した生活を送るための鍵となります。

公正証書遺言は、遺言者本人が公証人と証人２人の前で遺言の内容を伝えて、その内容を公証人が真意を確認して書面として作成したものです。

民法では証人は2名以上となっていますので３名以上でも問題はありませんが、一般的には2名の証人で作成される場合ば多いようです。​

公証人への相談・依頼：​遺言者またはその親族が、公証役場に連絡し、遺言内容の相談や作成の依頼を行います。​

この際、士業や銀行を介さず、直接公証人に依頼することも可能です。 ​

●必要書類の提出：​遺言者の財産内容や相続人に関する資料を公証人に提出します。​これには、財産目録や相続人の情報が含まれます。​

●遺言内容の確認・修正：​公証人が提出資料を基に遺言書の案を作成し、遺言者と内容を確認・修正します。​

●作成日時の決定：​遺言書の内容が確定した後、公証役場での作成日時を決定します。​必要に応じて、公証人が遺言者の自宅や病院に出向くことも可能です。​

●遺言書の作成：​指定日時に遺言者と証人2名が立ち会いのもと、遺言内容を口述し、公証人が遺言書を作成します。​遺言者と証人が署名・押印し、公証人が署名・職印を押すことで、遺言書が完成します。

●財産の詳細記載：​自宅や不動産などの具体的な財産を明確に記載し、相続人ごとの分配方法を詳細に示すことで、相続トラブルを防ぐことができます。​

●証人の選定：​遺言作成時には2名の証人が必要です。​証人には、相続人やその配偶者、直系血族は含められないため、友人や専門家に依頼することが一般的です。

公正証書遺言は、公証人が関与することで高い信頼性と安全性を持つ遺言書です。

​早めに作成して、財産の分配や相続に関する意思を明確に示すことで、将来的なトラブルを未然に防ぐことが可能です。

不動産売却：​実家を売却し、その資金を親の介護費用や生活費に充てる方法です。​不動産を売却するには時間がかかる場合があるため、早めの準備が必要です。​

賃貸：​自宅を賃貸物件として貸し出し、家賃収入を得る方法です。​ただし、物件の管理や維持費用が発生するため、管理体制を整えることが重要です。​

家族が居住：​親族が実家に住むことで、家の維持管理が容易になります。​この場合、家族間での合意が必要です。​

生前贈与：​親が生前に不動産を子供や親族に贈与する方法です。​贈与税などの税制面を確認しておく必要があります。

親が認知症を発症すると、法的な意思表示が難しくなると不動産の売却や賃貸契約の締結が困難になります。​

そのため、親が判断能力を有しているうちに、家族と十分に話し合いをして適切な手続きを進めることが重要です。​

また、家族信託や任意後見契約などの制度を活用することで、将来的な財産管理を円滑に行うことが可能です。​

これらの制度を検討する際は、専門家に相談して最適な方法を選択することをお勧めします。

1. 銀行口座や金融資産の整理

●口座の集約：​複数の銀行口座を持っている場合、主要な口座にまとめることで管理が容易になります。​

●定期的な残高確認：​預貯金や投資信託などの資産状況を定期的に確認し、最新の情報を把握しておきましょう。​

2. 共有名義の解消

●不動産や預金口座が共有名義になっている場合、将来的なトラブルを避けるために単独名義に変更することを検討します。​

3. 代理人カードや信託の活用

●代理人カードの利用：​銀行によっては、家族が代理で預金を引き出せる「代理人カード」を発行している場合があります。​ただし、金融機関によって対応が異なるため、事前に確認が必要です。​

●家族信託の活用：​家族信託を利用することで、親の財産管理を信頼できる家族に任せることができます。​これにより、認知症発症後も柔軟な財産管理が可能となります。​

●任意後見契約の締結：​親が判断能力を持っているうちに、信頼できる人を後見人として指定し、将来の財産管理を任せる契約を結ぶことができます。​これにより、認知症発症後もスムーズな財産管理が期待できます。

リビングウィルとは、本人が将来の医療や介護に関する希望を文書で示すものです。

​これにより、意思表示が困難になった場合でも、医療従事者や家族が適切な対応を行う指針となります。​

作成のポイント

●医療の希望：​延命治療の可否や具体的な医療行為に関する希望を明確に記載します。​

●介護の希望：​在宅介護を希望するか、施設入所を望むかなどの具体的な介護方針を示します。​

●家族との共有：​作成したリビングウィルは、家族や主治医と共有して理解を得ておくことが重要です。

親がどのような介護を望むのかを話し合い、適切な介護施設を選定しておくことは、将来的な安心につながります。​

検討すべき事項

●施設の種類：​特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホームなど、さまざまな施設の特徴を理解し、親の希望や状態に合った施設を選びます。​

●費用の確認：​各施設の利用料金や入居一時金、月額費用などを調査して経済的な準備を行います。​

●見学と相談：入居する​候補となる施設を実際に見学してスタッフと面談することで、施設の雰囲気やサービス内容を確認します。