BLOG ブログ

相続税の納税資金が足りない?不動産を売却して対応する際の4つの注意点

相続税の納税資金が不足している場合、不動産の売却で対応することは一般的な方法ですが、手続きや税務上の注意点を理解しておかないと、思わぬ損失やトラブルを招く可能性があります。

​このブログでは、相続が発生した際に不動産売却を通じて相続税を納める際に注意すべき5つのポイントを、専門的かつわかりやすく解説します。​

①相続税の納税期限と不動産売却のタイムラグ

相続税の申告・納税期限は、被相続人の死亡日の翌日から10か月以内と定められています 。​

この期限までに申告と納税を完了しなければ、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります 。​

不動産を売却して相続税の納税資金を確保する場合、売却手続きには名義変更、査定、販売活動、契約、引き渡しなどのプロセスがあり、これらを完了するまでに数か月を要することが一般的です。​

そのため、相続開始から4か月以内には売却活動を始めることが望ましいとされています。​

尚、相続財産の分割が完了していない場合でも相続税の申告期限は延長されません。​

このような場合は、法定相続分に基づいて申告して、後に分割が確定した際に修正申告や更正の請求を行うことになります 。​

相続税の納税資金を不動産の売却で賄う場合は、早期に売却手続きを開始して申告・納税期限に間に合うよう計画を立てることが重要です。​

また、申告期限に間に合わない場合や納税資金が不足する場合には、延納や物納の制度を検討することも可能です 。

②売却価格の設定ミスによる損失リスク

不動産売却における価格設定ミスは、売却期間の長期化や相場よりも安価での売却といった損失リスクを伴います。​

特に、相続税の納税期限が迫っている場合、焦って価格を下げてしまうことも考えられます。以下に、適切な価格設定のためのポイントをまとめました。​

高すぎる価格設定のリスク

市場価格よりも高値で売り出すと、買い手からの関心が薄れ、売却が長期化する可能性があります。​

売れ残った物件は「問題があるのでは」と疑念を持たれ、結果的に値下げを余儀なくされるケースもあります。​

一度設定した価格を上げることは難しく、下げる方向での修正が基本となるため、初期の価格設定が重要です。

低すぎる価格設定のリスク

一方で、相場よりも低く価格設定すると、迅速に売却できる可能性は高まりますが、本来得られるはずだった利益を損なうことになります。​

特に、物件の状態が良好で需要が高い地域にある場合、低価格設定は大きな機会損失を招くことがあります。

適正価格の見極め方

●複数の不動産会社に査定を依頼する:​1社だけの査定では市場価格を正確に把握することが難しいため、複数社から査定を受けて価格帯を比較することが重要です。 ​

●売買対象不動産の査定価格と市場価格の違いを理解する:​査定価格は不動産会社が算出する参考値であり、実際の市場価格とは異なる場合があります。​市場の動向や需要と供給のバランスを考慮し、適切な価格設定を行うことが求められます。 ​

●売買対象物件の周辺の取引事例を調査する:​近隣の類似物件の売却価格や成約事例を参考にすることで、相場を把握しやすくなります。​不動産ポータルサイトや不動産流通機構の情報を活用しましょう。 ​


相続税納税期限への対応

相続税の納税期限(相続開始から10か月以内)が迫っている場合、売却を急ぐあまり価格を下げてしまうリスクがあります。​

そのため、早期に売却活動を開始して余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。

​また、納税資金が不足する場合には、延納や物納の制度を検討することも可能です。

③譲渡所得課税の落とし穴:取得費加算の特例と空き家特例

​相続した不動産を売却する際、譲渡所得税の負担を軽減するために活用できる2つの主要な特例があります。​

これらの特例を適用することで、税負担を大幅に減らすことが可能です。​以下に、それぞれの特例の概要と適用要件を詳しく説明します。

相続税額の取得費加算の特例

この特例は、相続または遺贈により取得した財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる制度です。​これにより、譲渡所得が減少し、譲渡所得税の負担が軽減されます。​

【適用要件】
●相続や遺贈により財産を取得した者であること。

●その財産を取得した人に相続税が課税されていること。

●その財産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除

この特例は、被相続人が一人で居住していた家屋を相続し、一定の条件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。​

【主な適用条件】
●被相続人が相続開始直前に一人で居住していた家屋であること。

●昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。

●区分所有建物登記がされていないこと。

●相続開始から3年以内に売却すること。

●売却までの間、家屋を事業用、貸付用、居住用に供していないこと。​

この特例の詳細については、国税庁の案内をご参照ください。

注意点と併用制限

●これらの特例は、譲渡所得が発生している場合にのみ適用されます。譲渡損失が生じている場合は適用できません。

●同一年中に空き家とマイホームの売却があった場合、特別控除額は合計で3,000万円が限度となります。

●特例の適用を受けるためには、確定申告時に必要な書類を添付する必要があります。​

④減価償却費の計算ミスによる課税額の増加

相続した建物を売却する際、減価償却費の計算ミスにより、譲渡所得税が過大になるケースがあります。

​特に、減価償却の起算点を誤って相続時点からとする誤解が多く見受けられます。

​以下に、正確な計算方法と注意点をまとめました。

減価償却費の起算点は「被相続人の取得時」

相続により取得した建物の取得費は、被相続人が購入した際の取得価額から減価償却費を差し引いて算出します。

​この減価償却費は、被相続人が建物を取得した時点から、相続人が譲渡するまでの期間に基づいて計算されます。

​相続人が取得した時点から計算するのは誤りです。

減価償却費の計算方法

建物の減価償却費は、以下の式で計算されます。​

減価償却費 = 取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数​

取得価額:被相続人が建物を購入した金額

償却率:建物の構造と用途に応じて定められた率

経過年数:被相続人が建物を取得してから譲渡するまでの年数​

例えば、被相続人が2,000万円で購入した木造住宅(償却率0.031)を20年後に相続人が売却する場合:​

減価償却費 = 2,000万円 × 0.9 × 0.031 × 20年 = 約1,116万円​

取得費 = 2,000万円 - 1,116万円 = 約884万円​

このように、減価償却費を正確に計算することで、譲渡所得を適切に算出できます。

計算ミスによる影響

価償却費の計算を誤ると、取得費が過小評価され、譲渡所得が過大になります。​

その結果、譲渡所得税を過剰に支払うことになり、経済的な損失を被る可能性があります。

まとめ:早期の準備と専門家への相談が鍵

相続税の納税資金を不動産の売却で賄う場合、納税期限や売却手続きのタイムラグ、価格設定、税務上の特例など、さまざまな注意点があります。​

これらを踏まえ、早期に準備を始め、必要に応じて税理士や不動産の専門家に相談することで、スムーズな売却と適切な納税が可能になります。​

相続した不動産の売却に関して不安や疑問がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。

相続税に特化した専門家が在籍する事務所では、相続税の申告や不動産売却に関するアドバイスを提供しています。

お知らせ

「相続した不動産を適正価格で売却したい」とお考えの方は、ワイズエステート販売株式会社にご相談ください。

家財道具の処分や解体工事の費用についても事前に算出してから売却計画を立てることで、良い条件での売却の可能性が高まります。

まずは、お気軽にお問い合わせください。あなたの不動産の悩みを解決し、安心して売却できるよう全力でお手伝い致します。

CONTACT
お問い合わせ

当社へのご相談・ご依頼は、お気軽に以下のフォームからお問い合わせください。