今回は「所有者からも「売却できない」と言われた不動産を売却したお話をします」のお話です。
初めにお伝えしておきますが相場価格よりも高く売却したようなお話ではありませんので、そのようなお話を期待された方はスルーして下さい。
私が30代の頃から携わっている不動産取引において難しいと感じるのは権利関係の調整と占有者の退去の問題が起きている不動産です。
約10年前に、所有者の方から売却相談を受けた物件は、権利関係と占有者の問題を抱えている物件でした。
当時の私は裁判所で配当要求の終期公告をもとに競売を申し立てられた不動産所有者に任意売却を勧める営業活動をしていました。
配当要求の終期公告を見て登記簿謄本を取得して、その足で所有者様の自宅にアポ無しで訪問していました。
今回の案件にも7時半頃だったと思いますが、暗くなってからの訪問だったと記憶しています。
敷地面積は200坪前後の近隣では比較的大きな物件でした。
インターフォンを鳴らすと60代後半の女性が現れて
「なんですか?」
私は
「裁判所で競売情報を拝見して伺いました。債権者と交渉して任意売却で不動産売却しませんか」
とお伝えしたら、女性は
「ちょっと、お待ちください」
数分待っていると、奥から小柄で短髪の70代前後のご主人らしき方が
「なんだよ、こんな時間に。どこで競売の話を聞いたんだよ!」
ちょっとお怒りのようでしたが、私は淡々と
「裁判所で情報しりました。ご迷惑と思いましたが、この時間帯しかお会いできないと思いまして伺いました」
お怒り気味のご主人は
「なんだよ。裁判所から出回っているの。ちょっと上がって、話を聞いてくれや」
言いながら、リビングに通して頂きました。
ご主人は、晩酌中だったということもあり饒舌にご自身の生い立ち・仕事・家族の事を話始めました。
訪問時から1時間くらい経ってから、本題の話を始めたのですが、これまた内容がガクッと力が抜けるような内容でした。
実は、その物件は関西や関東に支店がある任意売却専門の不動産会社が専任媒介で販売中の物件でした。
任意売却専門で海千山千みたいな不動産会社らしく(ネット情報では。ですけどね)、ご主人が相談した時には営業担当が
「任せて下さい。全て上手く纏めて売却してみせます」
みたいな啖呵を切っていたらしいのですが、いざ依頼をしてみると権利関係の調整もそこそこに売却を始めたそうです。
全容を分かっているご主人は担当者に
「大丈夫かよ、そんなんで。契約しても引渡しできるのかよ」
と詰め寄っても担当者は
「大丈夫ですって、何とかなりますよ~」
と軽いタッチで受け流してきたそうです。
そんな話を聞いていたら時は20時過ぎになっていて、妻からはスマホに安否確認のLINEが・・・。
この時の私はこれから様々な不動産や各債権者や親族との交渉・協議が始まる事を想像もしていませんでした。
そんなこんなで、次回に続きます。