
不動産取引において「既存不適格物件」や「再建築不可物件」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
一見似ているようで、実はこの二つは法律上の意味も、実務上のリスクもまったく異なるものです。
こちらのブログでは、不動産の専門家の視点から「既存不適格物件」と「再建築不可物件」の違いを明確にして、それぞれの特徴や注意点、そして購入・売却時のポイントまで詳しく解説します。
「既存不適格物件」とは?

既存不適格物件(きそんふてきかくぶっけん)とは、建築された当時は合法だったものの、その後の法改正により現在の法令には適合しなくなった建物のことを指します。
● 具体例
【具体的な1例】
●過去には容積率200%で建てられた建物が、現在は容積率150%に制限された地域に所在しているケース。
●建築当初は建築基準法上の接道義務を満たしていたが、その後に道路の指定が変更されて法的に「道路」と認められなくなった土地に接している建物。
●過去には容積率200%で建てられた建物が、現在は容積率150%に制限された地域に所在しているケース。
●建築当初は建築基準法上の接道義務を満たしていたが、その後に道路の指定が変更されて法的に「道路」と認められなくなった土地に接している建物。
● ポイント
●既存不適格の物件は違法建築ではありません。 建築当時は合法であったが法律が改正された事により不適格になったに過ぎません。
●現存している限りは使用が可能です。現状のままで使用・居住することは問題ありません。
●ただし、増改築や建て替えの際には注意が必要です。現行の法令に適合させる必要があるため、元の規模や形状のまま再建築できない場合があります。
●現存している限りは使用が可能です。現状のままで使用・居住することは問題ありません。
●ただし、増改築や建て替えの際には注意が必要です。現行の法令に適合させる必要があるため、元の規模や形状のまま再建築できない場合があります。
「再建築不可物件」とは?

再建築不可物件(さいけんちくふかぶっけん)とは、現在は建物が建っていたとしても、その土地が建築基準法に定められた再建築の条件を満たしていないため、原則として新たに建物を建てることができない土地を指します。
● 主な原因
●建築基準法第42条により定められた、「幅員4m以上の道路」に間口2m以上接していない。
●接道している道路が建築基準法の道路となっていない為、建物の建築ができない。
●旗竿地(はたざおち)のように、細い通路部分が道路に接しているが再建築時に接道義務を満たせない。
●接道している道路が建築基準法の道路となっていない為、建物の建築ができない。
●旗竿地(はたざおち)のように、細い通路部分が道路に接しているが再建築時に接道義務を満たせない。
● ポイント
●既存の建物を取り壊すと、新たに建てることができない可能性があります。
●金融機関の融資が通りにくく、結果として資産価値が大きく低下します。
【再建築できない問題点を解消】
●隣地の一部を取得して接道義務を満たす
●接している道路を「建築基準法上の道路」として認定を受ける などの対応によって、再建築が可能になるケースもあります。
●金融機関の融資が通りにくく、結果として資産価値が大きく低下します。
【再建築できない問題点を解消】
●隣地の一部を取得して接道義務を満たす
●接している道路を「建築基準法上の道路」として認定を受ける などの対応によって、再建築が可能になるケースもあります。
既存不適格物件と再建築不可物件の違い

「既存不適格物件」と「再建築不可物件」の違いについて、比較表の各項目ごとに文章でわかりやすくまとめた解説をご用意しました。
1. 建築当時の合法性
既存不適格物件は、建築当時はすべての法令に適合して合法に建てられた建物です。
その後の法改正によって、現在の基準には適合しなくなったものの違法建築ではありません。
一方で再建築不可物件も、既に建っている建物は合法であることが多いですが、問題となるのは「その土地に再び建物を建てられるかどうか」です。
建築当時から接道義務を満たしていなかったケースなどもあるため、合法性よりも再建築の可否が重要なポイントとなります。
その後の法改正によって、現在の基準には適合しなくなったものの違法建築ではありません。
一方で再建築不可物件も、既に建っている建物は合法であることが多いですが、問題となるのは「その土地に再び建物を建てられるかどうか」です。
建築当時から接道義務を満たしていなかったケースなどもあるため、合法性よりも再建築の可否が重要なポイントとなります。
2. 現行法との関係
既存不適格物件は、法改正により新しい基準に適合しなくなった建物です。つまり、「過去はOK、今はNG」となったパターンです。
再建築不可物件は、現行法の建築要件(特に接道要件)を満たしていない土地であるため、今後新しく建物を建てることができない、という問題があります。
再建築不可物件は、現行法の建築要件(特に接道要件)を満たしていない土地であるため、今後新しく建物を建てることができない、という問題があります。
3. 再建築の可否
「既存不適格物件」と「再建築不可物件」の大きな違いは再建築ができるか否かです。
既存不適格物件は、建て替えの際に現行法に適合させる必要はあるものの、一定の条件を満たせば再建築が可能です。
再建築する際には、現行の法律に適している建物であれば建築可能ということになります。
一方で再建築不可物件は、建物を解体すると、原則として再度の建築ができません。
再建築を目指す場合は、隣地の買収や道路認定など、特別な対策が必要となります。
既存不適格物件は、建て替えの際に現行法に適合させる必要はあるものの、一定の条件を満たせば再建築が可能です。
再建築する際には、現行の法律に適している建物であれば建築可能ということになります。
一方で再建築不可物件は、建物を解体すると、原則として再度の建築ができません。
再建築を目指す場合は、隣地の買収や道路認定など、特別な対策が必要となります。
4. 増改築の可否
既存不適格物件は、一定の条件のもとで増築・改築が可能ですが、既存の不適格な部分をさらに拡張することはできず、法的な制限を受けることがあります。
再建築不可物件については、既存建物の維持管理の範囲であれば一部改修は可能な場合もありますが、増改築にはより厳しい制限がかかることが一般的です。
再建築不可物件については、既存建物の維持管理の範囲であれば一部改修は可能な場合もありますが、増改築にはより厳しい制限がかかることが一般的です。
5. 銀行融資の可否
既存不適格物件は、一定のリスクがあるものの、多くの場合は銀行融資の対象となることが可能です。
ただし、建て替えリスクがある点を金融機関が考慮する場合もあります。
再建築不可物件は、再建築ができないという重大なリスクから、通常の金融機関では融資が難しく、ノンバンクや現金取引に限られることが多くなります。
ただし、建て替えリスクがある点を金融機関が考慮する場合もあります。
再建築不可物件は、再建築ができないという重大なリスクから、通常の金融機関では融資が難しく、ノンバンクや現金取引に限られることが多くなります。
6. 売却のしやすさ
既存不適格物件は、利用可能であり、将来的な再建築も条件付きで可能なことから、一般市場でも売却は比較的しやすい物件です。価格が若干低めになる傾向はあります。
これに対して再建築不可物件は、買主の利用目的が大きく制限されるため、売却は困難になりやすく、価格も大幅に下がることが一般的です。
これに対して再建築不可物件は、買主の利用目的が大きく制限されるため、売却は困難になりやすく、価格も大幅に下がることが一般的です。
なぜ、この違いが重要なのか?

不動産を所有・購入・売却・相続する上で、「既存不適格物件」と「再建築不可物件」の違いを正しく理解することは非常に重要です。
● 不動産の価値評価に直結する
再建築不可物件は、建物が老朽化して取り壊す時期を迎えると、その後は新たな建物を建てることができないため、「土地としての利用価値」しか残らなくなります。
住宅や店舗などの再活用ができない可能性もあり、買い手が限られてしまい資産価値が大幅に下落します。
一方で既存不適格物件は、たとえ現行の法令には適合していなくても、一定の条件下で再建築や増改築が可能です。
そのため、立地や用途によっては、一般的な物件と同等の評価を受けることもあり得ます。
市場価値に与える影響は再建築不可物件に比べてずっと小さくて柔軟な活用が期待できるのです。
住宅や店舗などの再活用ができない可能性もあり、買い手が限られてしまい資産価値が大幅に下落します。
一方で既存不適格物件は、たとえ現行の法令には適合していなくても、一定の条件下で再建築や増改築が可能です。
そのため、立地や用途によっては、一般的な物件と同等の評価を受けることもあり得ます。
市場価値に与える影響は再建築不可物件に比べてずっと小さくて柔軟な活用が期待できるのです。
融資・資産形成に影響する
不動産購入時に住宅ローンを利用する場合、金融機関は将来的な担保価値を重視します。
再建築不可物件は、「建物を建て直せない=担保価値が低い」と見なされるため、住宅ローンの審査が非常に厳しくなり、融資が通らないケースが多くなります。
これに対し、既存不適格物件であれば、法令遵守の再建築が可能である限り、担保価値は一定程度評価されて融資を受けられることも多くあります。
また、リノベーションや用途変更などによって、資産価値を維持・向上させることも現実的に可能です。
再建築不可物件は、「建物を建て直せない=担保価値が低い」と見なされるため、住宅ローンの審査が非常に厳しくなり、融資が通らないケースが多くなります。
これに対し、既存不適格物件であれば、法令遵守の再建築が可能である限り、担保価値は一定程度評価されて融資を受けられることも多くあります。
また、リノベーションや用途変更などによって、資産価値を維持・向上させることも現実的に可能です。
購入・売却時の注意点

既存不適格物件と再建築不可物件は、どちらも通常の物件とは異なる制約があるため、購入や売却の際には事前確認が欠かせません。
問題点や注意すべき点を知らずに取引を進めると、後々トラブルや資産価値の低下につながる恐れがあります。
それぞれの物件タイプごとに、押さえておきたいポイントを紹介します。
問題点や注意すべき点を知らずに取引を進めると、後々トラブルや資産価値の低下につながる恐れがあります。
それぞれの物件タイプごとに、押さえておきたいポイントを紹介します。
既存不適格物件の場合の注意点
1. 建築確認済証・検査済証の有無を確認
既存不適格物件は建築当時は合法だった建物です。正規に建てられていることを証明するためにも、建築確認済証や検査済証の有無を確認しましょう。これがあることで、後の増改築や融資の際に手続きがスムーズになります。
2. 増改築予定がある場合は、事前に行政や建築士に相談
現行法では建て替えや増改築に制限がかかる可能性があるため、将来的な改修を検討している場合は、事前に行政窓口や建築士に相談して適合可否を確認しておくと安心です。
3. 住宅ローン利用時は、詳細な説明資料を準備
金融機関によっては、既存不適格物件への融資を慎重に審査する場合があります。再建築の可否や現在の建物の状態について説明できる資料を準備しておくことが重要です。
既存不適格物件は建築当時は合法だった建物です。正規に建てられていることを証明するためにも、建築確認済証や検査済証の有無を確認しましょう。これがあることで、後の増改築や融資の際に手続きがスムーズになります。
2. 増改築予定がある場合は、事前に行政や建築士に相談
現行法では建て替えや増改築に制限がかかる可能性があるため、将来的な改修を検討している場合は、事前に行政窓口や建築士に相談して適合可否を確認しておくと安心です。
3. 住宅ローン利用時は、詳細な説明資料を準備
金融機関によっては、既存不適格物件への融資を慎重に審査する場合があります。再建築の可否や現在の建物の状態について説明できる資料を準備しておくことが重要です。
再建築不可物件の場合の注意点
1. 接道状況を法務局や役所で必ず確認
再建築不可の最大の原因は、接道義務を満たしていないことです。購入前には必ず現地確認と法務局・役所での接道状況の調査を行いましょう。
2. 将来的な再建築の可能性を検討
再建築が「絶対に不可能」なわけではなく、隣地の買収や道路の認定・拡張などによって再建築が可能となるケースもあります。将来的な見通しについても調査・検討しておくとよいでしょう。
3. 投資目的や賃貸需要の有無を慎重に検討
住宅として使えない場合でも、立地や環境によっては貸倉庫・事務所・駐車場などとして利用できることもあります。賃貸需要や出口戦略(売却先の見込み)を考慮して、長期的な活用可能性を見極めることが必要です。
再建築不可の最大の原因は、接道義務を満たしていないことです。購入前には必ず現地確認と法務局・役所での接道状況の調査を行いましょう。
2. 将来的な再建築の可能性を検討
再建築が「絶対に不可能」なわけではなく、隣地の買収や道路の認定・拡張などによって再建築が可能となるケースもあります。将来的な見通しについても調査・検討しておくとよいでしょう。
3. 投資目的や賃貸需要の有無を慎重に検討
住宅として使えない場合でも、立地や環境によっては貸倉庫・事務所・駐車場などとして利用できることもあります。賃貸需要や出口戦略(売却先の見込み)を考慮して、長期的な活用可能性を見極めることが必要です。
専門家への相談が不可欠な理由

既存不適格物件や再建築不可物件のように、法的・技術的な制約がある不動産は、一般の方にとって判断が難しい場面が多くあります。
誤った判断や見落としがあると、思わぬ損失やトラブルにつながる可能性もあります。
そのため、こうした特殊な物件に関わる際は、早い段階から複数の専門家に相談し、正確な情報をもとに慎重に進めることが極めて重要です。
以下に、特に相談すべき専門家と、その役割をご紹介します。
誤った判断や見落としがあると、思わぬ損失やトラブルにつながる可能性もあります。
そのため、こうした特殊な物件に関わる際は、早い段階から複数の専門家に相談し、正確な情報をもとに慎重に進めることが極めて重要です。
以下に、特に相談すべき専門家と、その役割をご紹介します。
まとめ

既存不適格物件とは、建築当時は合法だったものの、法改正によって現行法に適合しなくなった建物を指し、使用や条件付きでの再建築が可能なケースもあります。
一方、再建築不可物件は、接道義務を満たしていないなどの理由で、原則として新築ができない土地のことを指します。
これらの物件はいずれも不動産取引において専門的な知識が求められ、住宅ローンの融資が通りにくかったり、売却が困難になるなどの制限が生じる可能性があります。
そのため、取引を行う際には、必ず現地の状況や法的な条件を十分に調査し、建築士や不動産会社、行政書士などの専門家に相談することが極めて重要です。
一方、再建築不可物件は、接道義務を満たしていないなどの理由で、原則として新築ができない土地のことを指します。
これらの物件はいずれも不動産取引において専門的な知識が求められ、住宅ローンの融資が通りにくかったり、売却が困難になるなどの制限が生じる可能性があります。
そのため、取引を行う際には、必ず現地の状況や法的な条件を十分に調査し、建築士や不動産会社、行政書士などの専門家に相談することが極めて重要です。
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